強直性脊椎炎とは
比較的若い方に起こる頑固な腰や背中の痛みは、強直性脊椎炎による症状の可能性があります。
強直性脊椎炎は、身体を支える背骨（脊椎）に炎症が起こり、骨がつながってしまう病気です。40歳以下の男性に多いとされています。
今回は、強直性脊椎炎について、その原因や主な症状、検査や治療、そしてリハビリテーションなどを簡単にまとめました。
強直性脊椎炎の原因
強直性脊椎炎のはっきりとした原因はわかっていません。
特定のヒト白血球抗原（HLA-B27）と強い関連性を持つことが知られており、家族内での発生もよく見られます。
強直性脊椎炎の症状
強直性脊椎炎の一番の症状は、腰や背中の痛みです。45歳未満に発症し、3ヶ月以上続くのが特徴で、「炎症性背部痛」という名前で呼ばれることもあります。痛みは急激に起こることもあれば、ゆっくりと進行することもあります。安静にしても良くならず、むしろ運動すると改善することが多いです。そのほか朝方30分以上腰がこわばる、明け方に背中の痛みで目が覚める、お尻の痛みが左右に移動するなどの特徴があります。
そのほか、背中をはじめとした全身のこわばりや疲れやすさ、体重減少や微熱、アキレス腱の付け根や股関節、そして肩・膝・足などの関節炎、目のぶどう膜炎や炎症性腸疾患、乾癬などが同時に見られることがあります。
強直性脊椎炎の検査
強直性脊椎炎を疑う場合、レントゲン写真やMRI検査を行います。
特徴的な痛みに加え、レントゲン写真で仙腸関節（骨盤の骨である仙骨と腸骨との間の関節）の変化が見られれば、強直性脊椎炎と診断することができます。
このほか、椎体の間の靭帯の骨化像が見られることがあります。MRI検査はレントゲン写真で変化が出る前でも炎症像が見られるため、診断に有用です。また、腰や背中の痛みが出る他の病気（椎間板ヘルニアなど）を除外することもできます。
また血液検査で炎症反応の確認を行います。さらにHLA-B27遺伝子の検査が必要ですが、2022年8月現在、健康保険の適用外となっています。
強直性脊椎炎の治療
残念ながら、2022年8月現在では根本的な治療法はありません。症状を和らげるための薬物療法や、リハビリテーション（物理・運動療法）が治療の主体となります。
薬物療法としては、炎症や痛みを和らげる消炎鎮痛剤が主に使用されます。また近年、関節リウマチの薬として開発されたTNF阻害剤やIL-17阻害剤が強直性脊椎炎にも有効であることが少しずつ証明されてきています。これらの薬は感染症などを含めた副作用が強いため、使用する場合には専門医とよく相談することが大切です。
状況に応じて手術療法を行うことがあります。関節の破壊が進行した場合は人工関節置換術を行います。脊椎が固定されてしまい歩行や日常生活に支障が出る場合は脊椎矯正固定術などの適応となることがあります。ただし脊椎矯正固定術は大きな手術であり合併症の危険も高いため、主治医とよく相談する必要があります。
強直性脊椎炎のリハビリ
強直性脊椎炎は特に体幹が硬くなりやすく、リハビリテーションが効果的な病気でもあります。温熱療法がよく効くこともあります。主治医や担当の療法士と話し合い、自分に最も効果のあるリハビリを見つけていきましょう。
腰から首の可動性（動きやすさ）を保つため、療法士から指導された軽いストレッチや体操は毎日行いましょう。
力を入れすぎたストレッチやマッサージ、また骨盤矯正などの矯正療法は骨折の原因となるため控えましょう。
強直性脊椎炎がこれ以上進行しないために
喫煙は、身体全体の炎症を引き起こすため、強直性脊椎炎の病状に悪い影響をあたてます。タバコを吸っている人は今すぐ禁煙しましょう。 また、骨の病気が進行した場合は、ほんの少しの怪我でも骨折してしまうことがあります。頚椎が骨折すると頸髄損傷を起こし、四肢麻痺や呼吸麻痺など命に関わる症状をきたします。相撲やレスリング、柔道などの格闘技やラグビーなどのコンタクトスポーツは、残念ながらおすすめできません。
まとめ
以上、強直性脊椎炎について簡単にまとめました。若い方でなかなか治らない腰痛を持ちの方、他院で椎間板ヘルニアなどと診断されて治療を受けているがなかなか治らないという場合は、この病気を疑う必要があります。気になる症状をお持ちの方は、ぜひ当クリニックまでお越しください。
参考文献
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ankylosing_spondylitis.html
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/06-筋骨格系疾患と結合組織疾患/関節疾患/強直性脊椎炎
https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/humira_rheum/patients_support/1806_sekitsui.pdf
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http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu03-2.html
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