乾癬(かんせん)は厚い鱗屑(ふけ)が付着した皮疹が特徴的な皮膚疾患です。
皮疹は赤みが強く、炎症を伴っています。アトピー性皮膚炎や通常の湿疹と比較すると、痒みは強くないことが一般的です。
乾癬の多くは尋常性乾癬と呼ばれるタイプです。
「尋常性」とは「ありふれた」という意味で、実際に乾癬全体の90%程度がこのタイプに分類されます。
それ以外のタイプとして、下記のものがあります。
乾癬では皮膚のターンオーバーが亢進していることが知られています。
通常皮膚は新生と脱落を繰り返し古いものが垢として剥がれ落ちますが、乾癬ではこのサイクルが短くなってしまうのです。
通常45日程度のサイクルが4〜7日となっており、これが乾癬の特徴である分厚い鱗屑の原因となります。
また物理的刺激を受ける部位で症状をきたしやすいため、肘頭や膝頭などに皮疹が見られることが多いです。
しかしではなぜこのようなターンオーバー亢進が生じるのかというと、はっきりとした原因はわかっていません。遺伝的な要因に加えて、さまざまな環境要因が加わることが発症の原因と考えられています。
なお”乾癬(かんせん)”という名称ですが、他のヒトから感染(かんせん)する病気ではないため注意が必要です。
乾癬は見た目が特徴的なため、検査を行わずに診断されることも多い疾患です。
他の疾患との区別が必要な場合や詳しく調べる場合は、皮膚生検といって皮膚の一部を切り取って顕微鏡で調べる検査を行うことがあります。
外用療法で最もよく用いられるのがステロイド外用薬です。
ステロイドには炎症を抑える作用があるため、皮疹の赤みが強いときにとくに有効な外用薬です。
もう一つよく用いられる外用薬がビタミンD3です。これはステロイド外用薬と比較すると即効性では劣りますが、長期間状態を維持する効果が高い外用薬です。大量に使用すると、高カルシウム血症の副作用をきたすことがあります。
外用薬としては、ステロイドとビタミンD3の配合薬であるドボベット®やマーデュオックス®も用いられます。
内服療法ではシクロスポリン(ネオーラル®)やアプレミラスト(オテズラ®)、レチノイド(チガソン®)が用いられます。広範囲に皮疹がある場合、外用薬だけでは治療が難しいためこれらの治療薬を併用します。
それぞれの内服薬で副作用に注意が必要です。シクロスポリンはアトピー性皮膚炎でも用いられる薬で、腎臓の機能に悪影響を起こすことがあるため採血検査が必要になります。アプレミラストは(とくに治療開始時に)下痢や頭痛などの副作用が生じやすい薬です。レチノイドは子どもに奇形をきたしやすくなるため、男女問わず避妊が必要です。
光線療法も、外用療法と併用で行われます。
光線療法とは紫外線を使った治療法です。乾癬の原因となる、異常細胞の増殖を抑える効果があります。紫外線は波長によってUVA・UVB・UVCに分けられますが、この中でも治療効果の高い波長のみを選択的に当てる治療法がナローバンドUVBやエキシマライトと呼ばれる治療法で、現在は光線療法というとこの2つが行われることが多くなっています。
上記のような治療を行なっても症状が強い場合、生物学的製剤という注射製剤やJAK阻害薬という内服薬が用いられます。
乾癬ではIL-17やIL-23といったサイトカイン(細胞内の情報伝達を行う物質)が過剰になっており、これが症状悪化の原因であるためこれらの作用を抑える治療です。
いずれも効果は強力ですが、こうした治療薬は胸部レントゲン検査や定期的な採血検査が必要で、対象患者や施設に制限があります。
乾癬は重症度によって治療が異なってくるため、皮膚科を受診し医師の診断のもの適切な治療を受けることが大切です。